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2015.02.20

今朝はとても静かに目が覚めた。
呼吸が浅く、少し苦しい。
寝ながら泣いていたようで目尻から耳たぶの上のほうにかけてできた涙の筋が冷えている。
それでも思っていたほど寒くはなくて、布団からは15分くらいで這い出ることができた。

午前7時前、コストコ大人買いしてきたパンを温めて食べる。
間違えてチャンネルが変えられない方のリモコンを持ってテーブルについてしまって、わざわざ取りに立ち上がるのも億劫だったのでそのままぼんやりとNHKを眺める。
お湯を沸かしてお茶を入れる。
お弁当箱にご飯と冷凍食品を詰める。
春巻、肉だんご、コロッケ。
さいきんお弁当はいつも黄色い。
素手で冷凍食品をつまむので指先が冷たい。なかなか感覚が戻らない。
だいぶ気持が塞いでいる。

相変わらず静かな気持ちで駅まで歩いて、静かな気持ちで電車に乗る。
やるせないので眠くもないけれど寝て過ごすことにしたら、あっという間に寝込んでしまって慌てて飛び出たら軽い貧血でくらっときた。

お昼休みに会社の食堂に行くと、窓から差し込む光がびっくりするほど明るくあたたかく、そうか、そろそろ春なんだな。花粉症ぎみの鼻をかむ。
レンジでチンしたお弁当を食べる。
春巻、肉だんご、コロッケ。
外は暖かそうなのに身体が芯から冷えていて、味噌汁だけ注文してしまう。
たかだか103円でざわつく気持ち。
貧乏は悪だ。

午後7時ごろ、仕事をしながら今ごろ可愛い後輩たちの舞台が始まるなあと思う。
そのお芝居はみんなにとって卒業公演で、だから出来不出来に関わらず無条件に愛おしい。
無条件に大事にできるものはどんどん増えていく。
歳をとるにつれマシになっていくものがもしあるとするならば、それはこのことだと思う。
抱えきれないほどの大事なものが、ふいに頭の中いっぱいにあふれて、笑いたいような泣き出したいようなたまらない気持ちになる瞬間が、ところかまわず僕をさらいにくるようになったのは、 まだそう昔の話ではない。気分の洪水はすぐに起こる。堤防がわやになっているのだ。
ここから彼らの舞台までは近いようでずいぶん遠い。はるか遠いところを思うということ。それはほとんど祈りに近い。
どうか、みんなの舞台が、よいものでありますように。

仕事が終わるころにはエビ中が二度目のミュージックステーションに出ている。もう歌い終わっただろうか。アイドルに興味がなかったのにこんなに気にかけてしまうのは毎晩のように同居人がTVで彼女たちの映像を見ているからだ。さいきんではひとりひとりの声を聞き分けられるようになってきた。声と顔は一致するのだけどいまだに名前が覚えられない。この、人の名前と顔とをむすびつける能力の欠落は、たぶん何かの病気だと思う。
この前台所で食器を片付けている同居人の背中に呼びかけようとして、とっさに名前が出てこなくて愕然とした。
仕事でもなんども同じ人に初対面のような挨拶をしてしまってひんしゅくを買うことがある。
覚えていられる人は脅威だ。

きょうの午後休憩ででくわした先輩は僕がオレンジジュース(100円)を飲んでいるのを見て、「あ、今はまたそういう時期がきてるんだね」と言った。
そういえばいつだったかの休憩中、なぜだか一定の周期で無性にオレンジジュースが飲みたくなることがある、なんて話をこの先輩としたのだった。僕は普段休憩中ドリンクを買わないで済ますので、あのときも先輩は珍しがってオレンジジュースのことを話題にしたのだっけ。
つくづく、覚えていられる人は脅威だ。

仕事あがり、珈琲西武にて1250円のオムライスセットを注文する。
夕飯にだけは気持が太っ腹になるのでこの出費に関してはくよくよ考えたりしない。
大人になったら酒と煙草が欠かせない中島らもブコウスキーみたいなカッコいいおやじになるはずだったのに、欠かせなくなったのは珈琲とチョコレートだった。

待ち合わせをしている友だちからメールが来て、彼はいままでまさに後輩たちのお芝居を見ていたようだ。彼が見てくれたなら嬉しい。自分が見たことのように嬉しい。

友だちといい加減な感じでおしゃべりして、明日の仕事も早いので、23時には解散する。

他愛もないおしゃべりであっけないほど元気になった。

他愛もないおしゃべりのなんとえがたいことか。ありがたいことか。
好き勝手自分のことを喋って、好き勝手自分のことを返される。
お互いの話を聞いていないわけではなくて、相手の話から自分の話が湧き上がってくる。それを相手に向かって発することになんのためらいも恐れもない。
ふつうに聞き流されて、聞き流す。しゃべりっぱなす気楽さが本当に好きだ。
そういう友だちがいて良かったと思う。
自分でも気味が悪いくらい素直にこんなこと書けるのは、弱ってる証拠だ。

まあ、いいや。
こんばんはいい気分だ。

3番線からの電車に乗って帰った。