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2015.08.13

生活
きょうはおやすみ。
夜まで特に予定がないものの、一緒に暮らしている人は仕事があり、そのくせぐずぐずと布団といちゃついているので、ついついテキパキと朝の支度を済ませてしまい、会社に向かうのを見送ったあとも二度寝するには布団をたたんでしまったし、それにすっかり目も冴えてしまっていた。

外に出かけるような気分にもなれず、huluでサイモン・ペグ主演の良くできたコメディをみて、これは邦題があんまりで、しかも良くできてるだけに退屈な映画で、なので途中から部屋の片付けと家計簿の整理をしながらそれでも結局最後まで観通した。
こまやかに掃除機をかけて、それでもまだ10時を少しまわったところ。
ドラマ版『ハンニバル』のシーズン1の最終回までの3話をついに観る。もちろん最高だった。huluではシーズン2の配信はないのだろうか。twitterで拾い見た情報によるとシーズン3で打ち切りらしいけれど、そもそも海外ドラマは長すぎて完結まで見れたためしがないからそのくらいがちょうどいいと思う。

お昼は適当に冷やし納豆うどんをこさえて済ませる。
梅と白だしでさっぱり仕上げてまずまずの味。

近所にあるという気になるカフェに行ってみるかと思いつつもなんとなくぐずぐずとめんどくさがり、もう一本映画を見ることにする。
『8月の家族たち』はWOWOWオンデマンドの調子が悪く、しょっちゅうリロードをしなくてはならない悪環境のなか、それでも集中力を切らさずに面白がれる一本だった。予告編を見たときから薄々気がついていたけれど決して好みの筋書きではない。とてもよく書けているのだけれどだからこそその巧さが鼻につくし、そもそも家族というのは愛憎渦巻くえぐいものだよねみたいな物語とはそもそも相性が悪い。そうしたことはさておいて、ただ俳優たちに見惚れる映画だった。
最近ではいよいよひどくなるばかりなのだけど、どんな映画を見ても本を読んでも、どんなお話だったかはだいたい忘れてしまって、あるシーンに切り取られた風景や、ふとした表情や、なんでもない会話をまるで自分のことのように記憶してしまうから、画がきれいであったり人が生きてさえいればのこりの要素はなくてもいいとすら思ってしまう。

約束の時間に間に合うためには一時間後には家を出なくてはいけないというようなタイミングでとうとう家を出る。目当てのカフェまで歩いて10分強。下見だと思えば30分もいられたら充分だ。環七を駅とは反対方向に歩いていく。六年前に上京してから毎回のことなのだけれど、引っ越してようやくこの土地にも慣れてきたかしらと思うようになるころ、家から駅とは反対方向へ散歩に出かけてみると、そこはあたりまえに知らない街なのだ。自分の居場所はここにはなかった。いまもまだない。そのあまりのよそよそしさに決まって心細くなる。目当てのカフェは15時で閉まっていた。夜は18時からの営業だそうでそれでは約束に間に合わない。場所はわかったから今日のところはよしとしよう。約束の時間までまだ余裕があるけれど、家に戻るほどでもない。そのまま駅へと向かう。環七沿いの道はやっぱり全く知らない街だという感じがする。きっと長くはここにいないだろう。いつ出て行くかはわからないけれど。
ここでのいまの暮らしは大きな不満もなく、楽しくやっているし、いまでも部屋の広さを持て余してさえいるのだけれど、近い将来もっと広くて快適な家に越そうと当然のように考えている。そうだ。強いて言えばキッチンはもっと使いよいところがいいし、テーブルと椅子が欲しいし、壁一面の本棚も必要だ。テレビだってあったほうが楽しいかもしれないのだ。このように、「自分たちの生活はこのままでは終わらないだろう。基本的には良くなっていくだろう」と思い込みながら現状に精一杯であることが、若さというものなのだと最近になって思うようになった。自らの未来への無邪気な楽観はたしかに尊い。そしてそれに気がついた僕はそろそろ自分の天井を決めてしまいかけているのかもしれない。それは必ずしも悪いことではないのだけれど。
ひとりでひとりのために面白おかしく生きていこうとはもう思えない。
欲張ることのカッコ良さや大切さも重々分かっているつもりだけれど、カッコつけることにいまいち熱中できないほどには、この暮らしを守りたいと思う気持ちが大きくなってきている。奪うのは一瞬だけれど守るのはずっとだ。『シャーマンキング』はやっぱりいいことを言う。ずっと続けていくには、カッコ良さや強さだけでは無理だ。弱音も吐くし、さぼりもしよう。ずるだってするかもしれない。そうまでしてでも続けていきたい。自分の自分に対する体面なんて、心底、どうだっていいじゃないか。

引っ越し前からあることは知っていてなかなか行くことのなかったゲオに寄ってみる。レンタルビデオ屋特有のしけた臭いがした。だるだるしたTシャツの家族連れやバイトちゃんの汚い茶髪の田舎臭さが地元を思い出させる。海外ドラマコーナーに『ハンニバル』シーズン2の扱いがあることを確認し、こころのなかで万歳をする。

新宿までの電車のなかでこれを書き上げる。まずまずの速さ。
待ち合わせは南口だから、新宿三丁目駅からはそこそこ歩く。
いつのまにかぶかぶかになっているジーンズがどんどんずり落ちてくる。ベルトをしてくるんだった。