2020.08.08(1-p.220)

ケーキ食べたい。

朝からそう思われた。それで外に出た。こんなにも暑いのにだ。グラニフの石黒亜矢子コラボのやつを見に行って、お目当てのものは完売だったものの二着買って、そこで何かのスイッチが入ったらしく、派手な半袖が欲しい! となってユナイテッドアローズでだるっとしたクロマキーみたいな色のTシャツと、モンペみたいな楽チンなボトムスを買ったり、無印で靴を買ったりした。いきなりの物欲で、頭から爪先まで服を買っていて面白かった。

建築物としての靴は好き、とくにトランスフォーマーみたいなスニーカーは楽しい、でも見るものだから履くイメージが湧かず買いはしない。靴は無印の撥水スニーカーが気に入っていて、仕事も休みもそればかり履いている。服も大体は着るより見るのが好きというので奥さんと合意し、例えば僕は本は読まなくても買うだけで満足したりするように、奥さんは財布を開いた時点で役目を終える服というのがあるという話で、面白かった。僕は本にはその背景にある経済圏や文化圏よ、どうかいっそう面白くあれ、という気持ちで読まない本まで買うが、服にはそこまではしないというか、服は明確に実用だった。だから必要最低限を少し下回る量の服しか持っておらず、たまにこうしていきなり買う。実用というのは似合うとかもあるがなにより着ていて自分の気分が上がるか否かが重要な機能で、いまはとにかく派手な色と大きなシルエットが必要なようだった。しかし僕の数少ないからほぼ毎日のように使う服はほとんどがユナイテッドアローズな気がする。なんとなくユナイテッドアローズジーンズメイトの上位互換のようなイメージがあって、たぶん盛大にまちがっているのだがなぜかあって、だからなんとなくお母さんセレクトの延長線上な気がしてしまっているが、これは何故なのだろう。ビームス無印良品の延長線上にあって、悪くはないのだけどなんとなくつまらないというか、安易すぎて頼りたくない、みたいなイメージ。服に対するイメージの乏しさというか、意味のわからない勘違いは我ながら面白い。

学生時代は代々木上原の12XUに憧れがあって、背伸びして何着か買ってそれらはいまでもお気に入りだ。社会人になったらこういうとこでばんばん買うぞ、と思っていたのに、結局服に対して財布の紐は硬いままだった。最近はどちらかというとタテイスカンナのほうが好みになってきている。ここでの散財はもう少ししたい気もする。池田剛介を読んで以来、やっぱりモノだな、というか、僕はモノが好き、みたいな気持ちになっている。昨日聞いたコクヨ野外学習センターのPodcast 「新・雑貨論」や、空飛ぶ車を所望するグレーバーも効いている。モノだ。モノへの欲望をもっと。

椿屋珈琲で奥さんとおしゃべり。僕の寅さんの話に奥さんは2.5次元の話で応え、僕はまた寅さんで返す。『寅次郎相合い傘』における山田洋次の巧さについて語っていたら、思わず語りに情感がこもっていく。すっかり渥美清のモノマネをしている。奥さんは、え、ふつうに面白く見ている人の感想だね、と言われて、ほんとそうだね、と思う。寅さんと2.5次元は『プロメア』の悪口で交差した。すごくいい話だった気がして、こういうとき録音しておけばよかった、という発想が出てくるようになった。奥さんと一緒にラジオやりたい。山村夫婦放談みたいなやつ。

夜は雑な中華を食べたくて、近所のてきとうなところで決める。テレビが割と大きな音で流れていて、コンビニスイーツをプロのパティシエなんかが評価するやつで、未だこんな感じなのかというか、20年前から企画も構成もなんにも変わっていなくて感心する。ちょうど昼間にハロハロの話をしていて、奥さんはハロハロを食べたことない、それが映し出されていた。こういう偶然が好き。

思った以上に量も脂も多くって、すこし家の近所の、歩いたことのない通りをぶらつく。きょうは久しぶりに奥さんとたくさん喋った気がして、家の中だとなぜだかしゃべらないよね、たぶん照明が暗めで眠くなっちゃうから、あとテーブルの高さや大きさもある、リビングで向かい合うと深刻な家族会議っぽくなっちゃう、家の中にカフェっぽいあれがあればいいのか? カフェっぽさとは? などと話し、おしゃべりのアフォーダンスを形成するためにもふたりでPodcast やろうよ、などとまた言ってる。ラーメンズおぎやはぎバナナマンが合同でやっている病院の待合室を舞台にしたコントがあって、そこで矢作の言う、大したやつだと思われてェー! という台詞が大好きで、最近のふたりはよく引き合いに出す。Podcast を奥さんと一緒にやるとなると、奥さんは僕の日記で勝手に形成されているであろう理知的なイメージに応えるというか、それを超えてやろうみたいな欲が空回りそうだから、いっそ最初に、大したやつだと思われてェー! と開示しちゃう作戦がいいんじゃないか。奥さんはそんなことを言っていた。いい作戦だと思った。