2020.11.09(1-p.325)

河川敷をDent May を聴いて散歩をしていた。鍼灸を受けに行って、よわった心身を整えた帰りのことだ。とても整った。ぽかぽかとした気持ちで、空気はひんやりと気持ちが良く、日差しは暖かだった。よい秋の一日だ。鍼の響きがまだどこか残っているようで、じぶんの体のどこを労るべきかがなんとなしに感じられる。近所の友達が野菜を分けてくれるというので、こうしてふらふらと歩いている。ちょうどポケットには庄野潤三の『野菜賛歌』があった。それを読みながら友達が野菜を持ってきてくれるのを待っていた。

野菜が好きで、よく食べる。身体にいいからというのでなくて、おいしいから食べる。年を取って、ますます野菜が好きになったような気がする。

好きな野菜のことを書くのに、何から始めたらいいだろう? 順位をつけられない。どの野菜がいちばんということはない。どれもみな、いい。

庄野潤三『野菜賛歌』(講談社文芸文庫)p.16

 

それで野菜をいただいて、白菜と茄子と柚子だった。お礼にそこらで買ってきたお団子を一緒に食べた。いい天気の具合をたたえあった。

家についてさっそく白菜を豚コマと大根と一緒にくたくたに煮た。茄子は横着な煮浸しのようにした。

夕食後、奥さんが庄野潤三の下の部分を読み上げて、うふふ、と言った。

ほうれん草といえば、映画の中でポパイが愛用しているが、あれは缶に入ったほうれん草だ。ポパイにもほうれん草のおひたしにちりめんじゃこをからませたのを一度食べさせてやりたい。

同書 p.17