2020.02.26

『戦う姫、働く少女』は批評される作品も八割がた接したことのあるものであることもあり、新しい作品への好奇心が掻き立てられないぶん、既知のものを未知のもののように見直すということがなされるのだが、その見直しの手つきもまた馴染み深いというか、「わかりみ」のあるものであり、なので自分でも普段ぼんやりと実践している読みを、精確に言語化することを試みている本だった。それはつまり自分のきちんとした形を持たない未然の読み方に形を与えることだった。形にならない生の思考に、明晰な言葉で形を与えること。それは一番難しいことだった。あっさりと言葉にできることなんて、自分ではほとんど何も考えていなかったからこそ言葉のためのスペースが余っていたというだけにすぎない。こういう本は読んでいて、どんどん頭の中が整理整頓されていくような爽快感がある。

 

併読している『校正者の日記 二〇一九年』もまた、しんとして気持ちのいい本だ。