2020.02.27

高松に行くことがあった。


初日の夜は半空に行った。

ヘミングウェイの愛したブラッディメアリーを注文すると、グラスと一緒に『ヘミングウェイの酒』という本が一緒に差し出される。このページをお供にどうぞ、とのこと。楽しい。読むとヘミングウェイはブラッディメアリーをほとんど小説に登場させていないとあったけれど、僕は『移動祝祭日』で飲みたくなった気がしていて、あれ、出てこなかったかなあ、しかもかなりいい感じに、と思っている。息子の風邪にも処方したというエピソードもそれこそ『移動祝祭日』の挿話として記憶されているけれど、なにかと混じっているのかもしれない。

〆にチーズケーキと珈琲。オースターの『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』をもじった冊子もいただく。街と共に文化を作っていく姿勢がとてもとてもいい。日付が変わる前にはお暇。文庫本を一冊記念に買っていく。周辺のブックマップもいただいて、いや、高松すごくいい街だ……! という思いを強く持つ。


翌日は日中に騙し騙し時間を作って、本屋ルヌガンガに向かう。めちゃくちゃにいい本屋で、あと三時間はいたかった。限られた時間内でとにかく欲望された本を、主に荷物の総量を気にしながら選んでいく。棚から棚に移動するたびに微妙に質の違う喜びがわあ! と湧きあがってくる、いい気持ちになる空間で、ここは今回みたいに慌ただしく訪問するのでなく、もっと時間をかけてじっくりと棚に向き合いたい、と思われた。ささっと一瞥していくというのは、この棚の誠実さに対してあまりに申し訳がなかった。みすずとZINE を一冊ずつレジに持って行って、買い、実はこんな本を作っていまして、と日記本の見本を、提案書と一緒に差し出す。ちょっと差し上げることはできないんですが、これからはす向かいに行ってくるので、その15分くらいのあいだ、もしよかったら見ていただいて、お店の雰囲気に会いそうであれば、ぜひ。そう伝えて、YOMS 。ここもまたいい場所で、ニコニコしながら棚を見て、ベケットプルースト論があってこれはもちろん買われ、謎めいた日記本は目に入った瞬間にこれを買わなければいけないな、と思われた。それで再びヌルガンガ、ご挨拶して、出、せっかくだからと予定が合わず訪問は叶わなかったなタ書の店構えを見に行く。いい。いいロケーション、いい雰囲気。これは入りたい。きっと再訪しよう、今度はちゃんとこのために来よう、とわくわくする。こうして各所を回ると、それは観光客というよりも、スタンプラリーにハンコを押していくような作業員になりかねない。時間がなくてもなるべく一軒一軒のお店にしっかり向き合いたいし、そのつもりだけれども、やっぱり一定の時間をかけることがつくる質というのがあって、特に本屋ルヌガンガは近所にあったら毎週通う、こんなお店が自分の街にあったら、ここは自分の街だと思っていいんだとなぜだか誇らしいような気持ちになりさえするだろう。そう感じさせる、丁寧な手つきが伝わってくる棚だった。このお店のためだけにもこの土地に再訪したい。