2020.02.28

自宅では奮発したマットレスセミオーダーのまくらなどで睡眠環境をばっちり最適化しているので、出先での睡眠が満足なものになることが稀だ。今回も枕を取り換えてもらったりいろいろ工夫はしてみたものの、やはり眠りが浅くてへんな夢ばかり見るし、明け方に目が覚めてしまうし、そもそも隣に奥さんがいないのが落ち着かなくて深夜まで寝付けない。一人暮らしの頃は午前三時ごろまで寝付けないことが多く、それは日曜日以外はTBSラジオによって助けられていた。ハガキを送ってみようなどという発想すらなかった。ジャンクだけでなく、シーズンによって時間帯はまちまちだったが夜電波が何より好きだった。アプリで時差聴取ができるようになってからは眠れないときはとにかく夜電波を聴いた。


高松の街は港からずっと平坦で、自転車があればどこまででも行けそうだ。海が近いからか花粉もそこまできつくはない。海から一〇分も歩けばすぐに市街地に着き、さらに車であればもう二〇分で農耕地や山が表れる。海から街から山まで、箱庭のようにミニマムにぎゅっと詰まっていて、半空もルヌガンガもYOMSもなタ書も、かなり狭いエリアに集中している。もっと注意深く歩いてみたら、クラスタごとに寄り集まって、独自の文化圏を醸成しているさまが確認できるのかもしれない。全体を通して散歩がRPGっぽくなる。わかりやすくエリアごとに雰囲気が変わるから、ゲームだったらBGMの切り替わる境目のようなものがすぐわかる。うどん屋だけがどこにでもある。遍在するうどん。香川県は糖尿病の人が一番多いところらしい。こちらに来てから小麦ばかり食べている。そういえば小麦は四国の名産なのだろうか。香川のうどんの小麦は香川で収穫されたものなのだろうか、そうでないなら、なぜ香川でうどんなのだろうか。空港から北上するあいだ、僕には田んぼしか確認できなかったように思う。乾燥しがちな地帯だというのは奥さんから聞いて知っていた。毎年夏になると今でも計画断水がある、そう奥さんが言っていて、奥さんはどこでそれを習ったのだろうか、さも常識のように話すので、僕も、そうなんだよねえ、などとさも知っているかのような相槌を打った。たしかに溜め池がそこかしこにある。


宮脇書店にもすこしだけ寄ってみた。「本なら何でも揃う」と豪語する大型書店が網羅的におさえてくれているからこそ、小さな個人書店が光る。大きなものから小さなものまでアーケードの周囲に集まっていて、なんだかいい街だな、と思った。清濁のバランスというか、大きさだけでなく、いかがわしさと清潔さ、定番と逸脱のバランスがちょうどよさそうだった。住んでみるとまた変わるというか、よそ者だからこそこういうことを考えたり感じる。