2020.04.02

会社が休みだったので電車に乗って下北沢に出かけた。迷いがなかったわけではない。毎日通勤のために満載される電車と、楽しみのために利用する電車と、リスクに差はないわけで、それにもかかわらず、前者だけを黙認するというのは、なんだか自分ではないものの都合によって自分が大切にされていない状況を認めてしまうようでもあるし、かといって、通勤のためにどうせ外に出るのだから好きに外出させろというのも、自分ではないものの都合によって自分が大切にされていない状況によってますます自分を大切にしないようなヤケを起こすことでもありうるわけで、しかし、うるせえ本を読もう! というやむにやまれなさがあり、読もうと思った。


なので、fuzkue に行った。本を読みに行った。


BONUS TRACK は学生時代に住んだ土地にあり、すでにその土地を去って六年が経った。よく下北沢まで散歩にいくときに通る道にそれはできていた。B&B を覘き、僕は最初の二階にあるB&B が好きで、でも二番目の地下も広くて好きだった。今回は気持ちのいい二階でしかも広いので、これまでのいいとこどりだった。日記屋 月日にこんにちはして、日記本フェアの流れで作られている棚に『プルーストを読む生活』を仲間に入れてもらえるよう図々しくお願いする。カフェラテがおいしかった。


他のお店も楽しそうで、今度奥さんと来ようと思いつつ、本が読みたくてたまらなかったので散策はほとんどせずにfuzkue に。阿久津さんのこんにちはにまずほっとする。聴き馴染んだ音楽に嬉しくなる。メルマガで期待を煽りに煽られていた噂の椅子が、めっちゃよかった。一日座ってられる。それで、『大洪水の前に』を開いた。ああ、ここはたしかにfuzkue だな、となって、がっつり本を読んだ。


帰宅すると奥さんが、いつもよりめっちゃ元気だね、と言う。そう、本をがっつり読むと僕は元気になる。本を読むことが守られてる、この場所のよさに僕も本をがっつり読むことでささやかながら寄与してる、そう思えるfuzkue がとても好きで、下北沢のfuzkue も、完璧に、fuzkue だった。嬉しい。


それで、だいぶ冷静になれたらしく、無理をしての外出はなるべくやめておこ、と思えた。自分の欲望にひとまず従順になることは、クールダウンのためにも必要な愚かさだった。過剰に不安になったり、へんにヒロイックな気持ちになることなく、好きなところに出かけ、好きな人に会いに行くのを、またやりたいな、と思う。それができるような日を待ち望む。待つのは苦手なので、待たずに済ませるやり口を、探っていく。