2020.10.08(1-p.325)

電車では伊井直行『さして重要でない一日』を読んでいた。鉛筆削りが買いたかった。近所にはなかったので街まで出て、鉛筆と鉛筆削りを買って、再び近所の町まで戻って喫茶店に入る。さっそく削り心地を確かめるように削り出し、作業。二時間くらいかけて全体の七分の一くらい進んだ。コーヒーもおいしく、豆も買って出る。

作業の合間にTwitter をいじっていると棒/VOU のポップアップショップが上野に出ていると知り、とっさに上野行きを決めた。念願の棒キャップとおでんの熱さに慄く人たちのスウェットを買う。せっかくだからROUTE BOOKS に行ってみたくて、そのまま歩く。きょうは一日雨で、そのくせ朝からずっと動き続けているのは元気だからではなく動き続けていないとすぐにダメになってしまいそうだったからだ。ここでも半時間ほど作業。いい棚だったけれど併設のカフェで汚さないでね、という注意書きがいくつもいくつも貼ってあり、本屋とカフェの共存の難しさを感じてすこし悲しくなった。コーヒーもいい感じで、いいお店だったのだけど、いいお店だったからこそ、ダサい客への予防線がそのよさを削いでしまっているようで、これは店への不満と言うよりも漠然とした「ダサい客」というイメージへの失望だった。それはつまりは世間というものを信用できないということだ。マーク・フィッシャーと、夕書房の『Station』を買って帰る。

棒キャップをかぶってうきうき帰宅すると、奥さんはテレビ会議中だった。それで、ただいま、という声を牽制するようにジェスチャーで会議中であることを示し、そっとPCのマイクをミュートに切り替え、帽子かわいいね、と言った。その一連の動作のスマートさがとても格好よかった。

夜は『ブルシット・ジョブ』読書会。思ったよりもブルシット・ジョブを他人事というか、じぶんは生産性の側にいる、というようなスタンスが多いように感じられて、意外だった。それで僕はむしろ生産しなくてもいい、役に立たなくてもいい、というのが、普通に感じられるような価値観をどう広めていくかというのが大事なんだと思う、みたいな話を一生懸命にした。