2020.10.28(1-p.325)

この半月ほどの仕事場の椅子が合わない。五分も座れば血流が滞り、座骨から肩甲骨のあたりまで熱を持ち出し鼻が詰まり寒気がするようになる。こんなことではマルクスも読めない──驚くべきことにまだ「マルクスを読む生活」のつもりなのだ。マルクスと生活の相性の悪さはもう十分わかっているし、この一か月一回も『資本論』を開いていないにもかかわらずだ──ほかの本も読めない。
 
そこで休憩時間に急いで本屋に走った。『本を気持ちよく読めるからだになるための本』を買うためだ。検索機に打ち込むと三冊あると出る。「実用:東洋医学」の棚だ。実用?
こういうどこに挿せばいいかわからないような本が好きだ。収録されているショートショートも体験の言葉もホームページで読んでいたが、とにかく体がつらい、紙と向き合うからだを整えたい、とすがるように買った。やっぱり「しゅばっぐんづぁーもんどぃやぁーッ」でゲラゲラ笑った。
 
遅くまで働いて帰るとくたびれていて怪獣のようだった。最悪。奥さんに背中をもんでもらって、ようやく人らしくなった。労働で思いやりやら気遣いを棄損されるの、マジでむかつくな、と思いつつ、どうしてもやられてしまうから労働は強力だった。でも、たぶん勝てないわけじゃない。戦う必要すらないかもしれない。戦いの比喩はいつだってがさつだった。
本を差し出す。奥さんも「しゅばっぐんづぁーもんどぃやぁーッ」でゲラゲラ笑った。
 
食後に校正の確認に返信する。「のびびのび」という誤字に奥さんがまたケラケラと楽しそうに笑った。ツボに入ったらしく、いつまでも「のびびのび」と歌うように呟く。